【自分が家族を!? 罪悪感に苛まれる永遠のトラウマ「ヘレディタリー 継承」の感想】
現代ホラーの頂点、
永遠のトラウマとなると謳われた超恐怖!
怖いというより罪の意識に苛まれる辛さだねえ、
だからこそ永遠のトラウマなんですよ!
話題の尽きないホラー映画の頂点と呼ばれる、
「へレディタリー 継承」やっと見ました。
いやー、素晴らしい作品でした。
何を好きこのんで永遠のトラウマになるようなタッチの作品をチョイスするのか、
あえてトラウマを作りたいのか自分でもよくわかりませんが
ホラー系の映画を見るというのは今まで知らない世界を覗く
ドキドキ感があるのでついつい期待してしまいます。
映画を見る前から期待値アップにアピールしてきます。
それなのに個人的には暗いところでちょっと物音がしてしまうだけで
驚いてしまうビビリだったりします。
このタイプの作風はストーリーのショック性よりも、
その場に自分がいたらと、
置き換えて考えると確かに心底からゾッとします。
そんな意味ではトラウマ映画の1本に数えられる傑作でしょうね。
よりによって、自分が家族を・・・した!?
罪悪感に苛まれ続ける永遠のトラウマというものがこれ。
トラウマとなるその場にいたくない、
できれば関わりたくない、
でもそうもいかない。
ところで、
わたし個人的に
最強のトラウマ映画といえば、
なんと言っても
パスカル・ロジェ監督作品、
2007年の「マーターズ(MARTYRS)」。
07年って、もうそんなに古くなっている作品なのかと
思ってしまいました。
確かにそうか、日本でのDVD化とか劇場公開も少し遅れてからの
ことだから若干ラグがあるのですよね
。
自分の中ではこの映画を見終わった後の不快感がいまだに残っていますよ。
なんだかんだ言ってもお化けだのスラッシャーだとの
というホラーそのものより、
人間の方がお化けなんかより遥かに怖いという事実を
ここにきてあらためて突きつけられる。
折しも、昨今はD Sとかいろんなハリウッド俳優も大勢関与している
と噂されているなんとかクロムとかいう名前もよく聞くし、
ここで描かれている世界はそもそもフィクションなのではなくて
確実に実在しているモデルがあるんだろうなと考えた次第です。
「へレディタリー」の怖さ、、、
なんというか、
ここにはいたくないと思ってしまう非現実感。
個人的にはそう思う。
今ある普通に暮らす現実の延長線上に異世界へ渡る扉を開く鍵がある。
ビジュアルのショックよりも同じような体験をしたくはない、
普通の人がいかに壊れていくのか、
そちらの方が生活を壊していく絶望感につまされる。
ショックやびっくり、サプライズを怖さと思うのであれば、
演出も静かに進行するのでちょっと拍子抜けてしまうところもあるのでしょうけど、
見ている人の気持ちを蝕んでいくようなじわじわ攻められる感のあるムードが
怖さを引き立てているように思えますがいかがでしょう。
自分もへレディタリー を2度見て、
それから解説を読んで、
なんとなくはですけど自分なりに解釈できたような、
そんなイメージです。
人ひとりひとりの無力感、絶望、孤独感が
劇中で
どんどん高まっていきます。
最愛の誰かを失った時に、
どうしてくれるんだと思うこともあるでしょうけれども、
反対に「本人が望んだ」とか「先立った家族が呼んだ」とか
ちょっとした考え方で少しは目の前が明るくなるかどうかが変わってきます。
個人の全てが相手を許すというものなかなかねえ、
できないことかもしれないけどそこは
人生とは
そんなものだと思っていくことが正しいのかもしれません。
最愛の人を失う現実、
言ってはいけないことだとは思うのですが
チャーリー役のミリー・シャピロ、
この子の存在がいつまでも残って怖い。
子供なのに何もしていなくても怖い。
ズバリ、顔。
女の子相手に顔とか言っちゃいけないよね。
口を鳴らす癖、死骸の破損、
周囲は目に入っていない自己の世界への没入感、
それにしてはどうして?と思わせるその幼さ。
このアンバランス感覚、一体なんだんだ。
よく人に怖いものと聞くと「真夜中の子供」
という答えが帰って来ることがあるが、
うん、分かる気がしますよ。
反対に嬉しい驚きもありまして、
それがもう一人の俳優、
ガブリエル・バーン!
この人とても好きなんですよ。
最近見ないな、
なんて思っていたらここでは寡黙なドクター、
父親として登場。
最初、顔を見た時にあれ、ガブリエル・バーンかな?
と思ったものです。
というのも、実年齢だったらもっと高齢なように思っていたのですが、
若い時のままとほとんど風貌が変わっておらず、
最後のエンドロールで名前を確認するまでは本人かどうか、
ちょっと信じられなかったくらいです。
さて、物語のイントロとしては祖母の葬儀、
その後の家族を取り巻く変容です。
前半、最大の物語が大きく転ずる事故が起きます。
本作の絶対的なキーマンであるはずの人物が絶命します。
この衝撃、普通じゃないのが物語の開始早々から このキーマン自身その人が普通じゃないからなんですよね。
冗長な説明描写も極力抑えてあるから、
もう一度見て見ようと思って映画を2度、3度と重ねて
見た人の不快指数も上書きされたことでしょう。
それがスイッチオフくらいの切り替えの仕方で姿を消します。
主役クラスの人、
あるいは絶対的なキーマンがいきなり消えるという
「置いていかれた」感。
過去にもそんな作品がありましたよね。
例えばそう、
古いところの作品に例えるなら
「サイコ」の
ジャネット・リーを思い出します。
ジャネット・リー。
冒頭、物語の重要人物だと思っていたのにです。
突如何者かが刃物を振りかざしてジャネットに襲ってくる。
何度も刺された彼女は床に倒れ、絶命してしまう。
「あら、あなた…、主役じゃなかったの?」
観客の誰もが
「えっ、」と思う展開でしたよね。
今作もそんなこの先どうなるのと期待というより不安になる。
当然ストーリーの進行の中でもこのアクシデントは
核になる重さを抱えているので、
どんな場面でも大切な人を失った喪失感とやり場のない怒りの
沸点を上げていくことになっていきます。
この時の空気の重さと言ったらない。
トラウマを覚えるという設定はおそらくこの構図そのものが
描いている情景を指すのかも知れません。
その後は、身の回りに頻繁に起きてくる不可思議な
現象に
家族がさいなまれたり、
普通に暮らしていくことが困難な状況に直面させられます。
物語後半になるにつれて、
バッドループは加速して落ちていきます。
最大のヴィジュアル的な見せ場は、
画像もたくさんネットで公開されているから言っちゃってもいいよね。
ガブリエル・バーンの見事な全身着火!
クロネンバーグの初期の作品をなんとなく頭の中に思い起こしてしまいました。
うん、「ユージュアル・サスペクツ」では
骨になるまで焼かれていましたから
今回くらいの焼け加減の方がリアリティがありそう。
それとふと思ったのですけどカメラは止まってしまっていましたが、
もしかしたら「・・・・」は切断されていたような、、、
そんなふうにも見えたので何か解説本でもあったら気にしてみたいです。
物語がどう決着をつけるのか、
ここではまだはっきり見えてきません。
逃げることのできない状況の中で追い詰められていくこと、
わけのわかんないお化けだのなんだのが
出て来なくたって気がおかしくなりそうです。
「エクソシスト」を彷彿させる驚きのシーンがあるのですけど、
ここ、笑うところじゃないですよ。
レビューを見ているとあまりにもこのシーンで
「笑っちゃった」という意見が多い。
そもそも何が可笑しいのか。
ここで笑う観客がいたらここまで張り詰めていた
緊張感も
映画の没入感も一気に下がります、幻滅ですよ。
それくらい重要なラストを飾る終わりの始まりです。
そこは分かって欲しいよね。
他にもオカルトチックな描写では体の自由を乗っ取られて
顔面を強打させられるなんていうのも
グァダニーノ版の
「サスペリア」にもあった演出でしたからね。
やっぱりオカルト映画にはこういう当事者ならでしか
分からない怖さは必要ですよね!
そうしてラストになるのですが、
ここでも思い起こされます。
「マーターズ」ラストのインパクト。
「マーターズ」で最後まで苦しめられた
ヒロインの視線と
本作でラストを飾る青年の「視線」がなんと一緒です!!!!
「サイコ」にしろ「サスペリア」にしろいわゆるカルト・クラシック。
そうした映画のニュアンスを汲みながらも、
ワンランク上の怖さに押し上げて、
現代的な独自の世界観を作り出しちゃう。
この10~15年くらいはホラーはトーチャー系が流行っていましたけど、
やっぱりホラーといえども繰り返して見てみたくなるような設定や
伏線をしいた作品の方が後々楽しめますよね。
語弊はあるかも知れませんが、
例えて云うなら文学性。
ドストエフスキーを何度も繰り返して読むことを褒め称えるのであれば、
綿密に設定を織り込んだホラー映画だって繰り返して
鑑賞するに値する価値は絶対にあります。
「マーターズ」を何度も引き合いに出してしまいましたが、
やっぱりホラーやオカルトといったジャンルの底上げに位置付けられる作品なはず。
好みはどうあれ一度自分の目で感性で確認すれば良い。
自分はマーターズをもう一度見るには勇気がいるけれども、
いや、見ないだろうな。
「ヘレディタリー」ならいろんな伏線を回収しながら
監督の意図や脚本の中に込められたメッセージを
紐解いていくことも楽しいのではないか。
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